全てを知った夫は突然立ち上がり、荷物など持たず家を出てしまった。
義父
「あの野郎、逃げやがった…!」
義父が慌てて後を追いかけたが、逃げ足だけは早くすぐに見失ってしまったらしい。
義父
「ありさちゃん、本当に申し訳ない…。謝って済む問題じゃないのはわかってる。でも、2人を育てた親として、謝罪させてくれ…。」
義両親は並んで私に土下座をした。
2人が土下座をしてるというのに肝心な義妹は椅子に座ったまま呆然としていた。
それを見て頭に来た私は義妹を椅子から引きずり下ろしてしまった。
私
「あんた、何ぼーっとしてんの。どうして何も悪くないお義父さんたちが土下座してんのよ!!一番私に謝罪をしなきゃならないのは他でもないあんたたちでしょうが!!」
さすがに手こそは挙げなかったが、どうしても黙っていられなかった…。
すると義妹は子供のように泣き出し、嗚咽混じりで謝罪してきた。
義妹
「ご、ごめんなさいぃ…。お、お兄ちゃん…に、無理矢理迫られたのがきっかけで…それからずっと…」
私
「え…?」
聞くと、高校を卒業したあたりくらいから夫が義妹に対しいやらしい目で見るようになっていたという。
それから義両親が不在中、寝ていた義妹を無理矢理襲ってきたというのだ…。
私
「そ、それって…本当なの…?」
義妹
「はい…、きっかけはそれでした…。でも、私も徐々にそれが当たり前になっていって、気づいたらお兄ちゃんを好きになってました…。お義姉さんのことを考えると気の毒だったけど…、でも好きな気持ちを止められなくなってて…。この関係が終わったら私、どうしていいかわからなくて…」
聞いていて頭が痛くなる内容だった…。
これには義両親も開いた口が塞がらない…。
義母
「どうしてそんな大事なこと黙ってたのよ…!!わかってたらこんなこと…ならなかったのに…」
義妹も被害者と言えば被害者だが…。
夫に洗脳されていたのかわからないが、結果的には夫のことを好きになりこういう結果に至ってしまった。
そしてあの音声にあった内容も、全て本音だったという…。
全てを認めた義妹の話に同情してしまう自分がいたが、気持ちに変化があり夫を好きになってしまった。
そしてお腹の子供を利用するような真似をしたこと、これだけはどうしても許せなかった。
私は書類を出し、義妹に渡した。
私
「…これは慰謝料請求書。よく読んでおいてね。」
義妹
「え…、慰謝料…?」
私
「そう、これはあなたが私に払うの。…さっきの話、最初は同情してしまったけど、でもどんな形であれ結果的に人の夫を好きになり◯倫してしまった。その事実は変わらないよね?」
義妹
「……。」
書類を見つめ黙り込む義妹に、義母はキツく一言言った。
義母
「人様の夫を奪った罪は重いのよ。あんたにまだ善良な気持ちが残っているなら、きちんと償いなさい。」
その言葉で義妹は我に返ったのか、書類を手に取りひたすら私に謝り続けていた。
残るは行方をくらました夫だ…。
私
「裕也さんのことですが…」
義父
「あぁ大丈夫だ、俺が何としてでも見つける。だからそれまで待っていてくれないか…?あいつにこそきちんとした謝罪をさせるべきだ。だから頼む…!」
頭を下げる義父に、私は夫のことを任せることにした。