放置子

【No.7】毎日マイホームに来る放置子

放置子

◎前回の話はこちら

【No.6】毎日マイホームに来る放置子
◎前回の話はこちら私の言葉を聞いて、ケンくんお得意の泣き真似が始まった。でも私は、態度を曲げなかった。私「泣かれても困るのよ。 うちにはまだ小さな娘もいるし、 我が家には我が家の都合があるの」ケンくん「どうしてそんな意地悪なこと言うの。 俺

どんな理由で我が子をほったらかしているのか、
どんな理由で「遅くまで帰ってくるな」と
小学校低学年の子どもに言い含めているのか。

様々な憶測が私の頭の中を駆け回った。

今日もケンくんは家に来るだろう。
明日も明後日も、ずっと。

やっとの思いで手に入れたマイホームに、
暗い影が落ちる日々。




家族で安心して過ごせる居場所がほしくて、
がんばってきたのに。

そう思うと悔しさで泣きそうになる。

アパートと違って、
容易く引っ越しをするわけにもいかない。

私にとってマイホームは憧れであり幸せの象徴だった。

でも、嫌なことがあってもおいそれと引っ越せない持ち家は、
諸刃の剣でもあるのだと知った。




あの親子にさえ会わなければ。

そんな考えが脳裏をよぎった時、
いつものようにチャイムが鳴った。

ケンくん
「あーそーぼー」

ケンくんの声に反応して、
娘が玄関に駆け寄ろうとする。

その腕を思わず掴み、しーっと口元に手を当てた。

娘はきょとんとした顔をしている。




でも私は、
「静かにしててね」とだけ告げて、
インターホンのスイッチを切った。

反応がないことに痺れを切らしたケンくんが、
「おーい!」「いるんでしょ?」と声をあげている。

それでも返事をせずにいると、
突如窓ガラスがバンっと大きな音を立てた。

飛び上がった私たち親子の目に、
窓ガラスに張り付いたケンくんの顔と手のひらが映る。

バンバンと窓ガラスを叩き続けるケンくんをレースのカーテン越しに眺めながら、
私は娘を抱きしめ、身体を震わせることしかできなかった。

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