Fちゃん
「パパ〜、早くこれやろうよ!ねぇってば!」
旦那
「わかった、わかった。今行くから」
奥から聞こえてくるのは、私の来訪に気づかぬまま、娘の友人であるFちゃんと遊び続ける旦那の声。
Fちゃんは、旦那のことを「パパ」と呼んでいるのか。
どこか冷静にそう思いながら、玄関に阿呆みたいに立ち続ける私。
そういえば、最近娘がこぼしていた。
Fちゃんの態度がおかしくて、前みたいに仲良くしてくれない、と。
それは、こういうことだったのか。
ふいに理性の糸が、プチンと切れる音がした。
衝動任せにずかずかとM子の家に上がり込み、ガラリと扉を開けた。
固まる旦那と、私を睨むFちゃん。Fちゃんが、唐突に言った。
Fちゃん「いい加減、パパを私にくれない?これまでは娘ちゃんのものにしてあげてたんだから、次はこっちの番でいいでしょ?」
何を言ってるんだろう、この子は。
ぬいぐるみでもあるまいし、あっちのもの、こっちのもの、という話ではない。
私
「どういうことなのか、説明して」
旦那
「いやこれは、その……」
私
「説明して。その代わり、家に帰ってからよ。こんなところ、これ以上1秒だっていたくないわ」