不妊治療を始めて5年。
年齢を重ねるごとに妊娠の確率はどんどん減っていっていた。
なかなか授かることができず、行◯自体が『業務』と化していったことで、夫婦の間に溝のようなものができていた…。
私
「またダメだった…」
夫
「…そんな気がしてた。」
夫の反応も徐々に薄くなり、行◯自体も躊躇されることもしばしば…。
そこで私はある決断をすることにした。
私
「ねぇ裕二。ちょっと話がある。」
夫
「うん、どうした?」
私
「私、決めたの。来月やる治療で最後にする。」
夫
「え?どうして…」
私
「正直言うと、裕二との子供は欲しい。諦めたくない。」
私
「でも、もう貯金も底につき始めてるし、何よりこうやって授かれないことで裕二と気まずい空気になっていくのも耐えられない。だから次で最後にしようと思うの。」
素直な気持ちを伝えると最初は驚いていた夫だったが、小さく頷き答えた。
夫
「わかった…。陽子の言う通りだ。治療は自分たちが望んでいたことなのに、かえってそれが重荷になっていたところもあったと思ってる…。こんなこと陽子に言わせてしまってごめん。万が一次も同じ結果だったら、その時は2人でのんびりと好きなことして過ごそう。」
私
「うん…。」
私は涙ぐみながら夫に抱きしめられた。
どんな結果でも、それが自分の運命だと思ってきちんと受け入れよう、そう思った。
そして最後の治療の日。
私
「・・なので今回で治療は最後にしようと思います。」
医師
「そうですか…、わかりました。僕たちも最善を尽くします。一緒に最後まで頑張りましょうね。」
医師に夫と話したことを伝え、最後の顕微授精を行うことになった。
治療中、私は心の中で何度も祈った。
私
(どうか、どうか授かれますように…!!)
最後の治療が終わり、いつものように医師に挨拶をして病院を出た。
私
(終わった…。この5年間あっという間に感じたな。いつもここ出る時嫌な気持ちだった気がする…。でも最後くらい明るく過ごさなきゃね!)
私はスーパーに寄ってたくさんの材料を買って帰宅した。