◎前回の話はこちら
私
「あ…あの…」
夫
「なんかさっきから様子おかしいなって思ってて…。
声かけられなくてすみませんでした…」
私
「いえ…」
夫
「もしかして…その…痴漢ですか?
犯人誰かわかります?」
私
「……」
優しく心配してくれた当時の夫の声に安心して、
怖さもあってその場で泣き崩れてしまった。
周りの目もあるため、
夫は私を連れて隅に寄ってくれた。
夫
「大丈夫ですか…?
あの、もしよかったらこれでも飲んでください」
そう言って
自販機で買ってきてくれた飲み物を渡してくれた。
私
「ありがとうございます…」
夫
「…それで、
さっきの痴漢の犯人、誰かわかりますか…?
わかれば駅員さんに話しておこうと思ったのですが…」
私
「犯人…。実は…」
私はこれまで
自分がストーカー被害に遭っていたことを話した。
さっきの痴漢も
あのストーカーで間違いないということも…。
夫
「そんな…。
それじゃあ顔は見てないってことですか…?」
私
「はい…。
後ろにピッタリくっついてたこともあって、
声しか確認できてないです…」
夫
「そうだったんだ…。
怖い思いしてたんですね…。
あ、警察には被害届とかは…?」
私
「最初の頃相談してたんですが、
結局今の時点では動くことができないって
言われて…」
夫
「なるほど…。
一応ここの駅員さんに被害があったことだけ
伝えておきましょうか」
それから夫は、
私に代わって手際よく駅員さんに話をしてくれ
対応をしてくれた。
私
「すみません、
今日はありがとうございました。
これからお仕事ですよね…?
すみません、変なことに付き合わせてしまって…」
夫
「いえ、気にしないでください!
それじゃ僕はこれで…」
私
「…あ、あの!
もしよければですが…
今日のお礼をさせていただけませんか…?」
この時の私は当時の夫をただの優しい人、
と思ってそう声をかけてしまったのだ…。