◎前回の話はこちら
夫
「いや…お礼だなんてそんな。
僕は特に何もしていませんから…」
私
「そんなことないです。
声をかけてくださって、話まで聞いてくれて、
私も心が少し救われました…。
後日お礼させてください」
夫
「…わかりました。
それじゃあこれ…」
そう言って夫は私に一枚の名刺を渡した。
私
(聡さん…っていうんだ…)
その日は体調不良と言って仕事を休み帰宅した。
後日、
名刺に書かれてある番号に電話をかけた。
私
「あ…あの、
先日電車で声をかけてもらった者です。
お礼をしたいので、〇〇日に会えますか?」
それがきっかけで
私たちは定期的に会う仲になった。
気づけばストーカーからの被害は落ち着き、
夫と出会ったことでなくなったんだと思っていた。
ストーカーに解放された
そう思うと、
毎日が楽しくなり、
一層夫に対して恩があるようにも感じていた。
それから私たちは次第に惹かれ合うようになり、
出会って1年が経つ頃に告白をされ、
お付き合いをするようになった。
この時は、
こんなに優しくて私を大事に思ってくれる人なんていない、
この人といたら幸せになれる、
そう思って疑わなかった。
とんとん拍子に事が進み、
交際1年で結婚。
私は幸せの絶頂にいたと思う。
夫が私を大事に思ってくれるあまり、
出かける場所や誰と会うのかなど、
気づけば自分から話していたし、
それが普通とも思っていた。
ーー現在
香織
「真奈…?大丈夫?」
私
「あぁ…
ちょっと昔を思い出してて」
香織
「…ストーカーのこと?」
私
「今になってまた…ってこと
あるのかなとか…」
香織
「…思ったんだけどさ、
旦那さんじゃないよね?」
私
「え、何が?」
香織
「…あの時のストーカー」
ドキッとした。
香織の一言で、
これまでモヤモヤした何かがはっきりした気がした。