夫
「ちょっと待って麗奈…俺を捨てる気!?俺仕事クビになったんだよ!?不安でいっぱいなのに俺…お前がいなきゃ生きてけないよ〜!!」
夫は私にしがみついて泣き始めた。
私
「…その汚い手離してくれる?私がいなくても森口さんがいるじゃない。あの人ならあんたの尻拭いでも欲求処理なんでも喜んでしてくれるんじゃない?」
夫
「ちょっと待ってよ…!!俺は麗奈がいいんだよ〜!!お願いだから戻ってきてよ!」
私は泣き叫ぶ夫を無視して控室へ戻った。
ひとりになった瞬間、とめどなく涙が溢れた。
ひとしきり泣いた時、ドアをノックされた。
私
「…はい」
責任者
「失礼します…。私はこの式場の責任者の土屋と申します。」
土屋
「この度はうちの森口が…その、大変ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした…!!」
私
「…もういいですから。」
土屋
「もちろんですが、森口は本日付で退職させます。この後本人にも伝えます。そしてお子さんですが、万が一何かがあれば、その時は私が責任を取らせていただきます…」”
私
「責任…?あなたが取れるんですか?私はあなたに何も望んでいませんし、取るならあの女が取るべきでしょ!…もうひとりにしてください。息子のところに行かないといけないので。」
土屋
「…かしこまりました。表に車をつけております。病院までお送りします。」
何度か断ったが、それだけはさせてほしいと引こうとしない土屋さん。
私
「…わかりました。それじゃあ病院までお願いします。」
結局私はその押しに負けてしまい、着替えを済ませた後病院へ送ってもらうことになった。
病院に着く頃。
土屋
「私にも一人息子がいまして…。お子さんと同じ卵アレルギーでした…。初めての子育てに加えアレルギーなんて、どうしていいかわからなくて…」
土屋
「だから麗奈様がどれだけ頑張ってこられたのか、同じ母親として私にも理解できます。だからどうしても放っておけなくて…」
私
「そうだったんですね…。すみません、さっきはひどい態度とってしまって…」
土屋
「いいえ!気になさらないでください!今はお子さんのことだけ考えてくださいね。」
土屋
「今では私の息子も小学5年生で、卵アレルギーは克服しました…。だから翔太くんも、きっと大丈夫ですよ…。」
私
「…ありがとうございます。」
病院に着くと中に入るまでずっとお辞儀をしてくれていた。
息子のいる病室へ行くと、そこには眠ったままの息子の姿があった。