放置子

【No.12】毎日マイホームに来る放置子

放置子

◎前回の話はこちら

【No.11】毎日マイホームに来る放置子
◎前回の話はこちら 翌日、 私は落ち着かない気持ちで夕方の時間を過ごしていた。 ケンくんが来るか、来ないか。 どちらの可能性もあり得る。 それによって自分がどう動くべきかを考えていた。 ...

悲鳴のようなケンくんママの声が耳の奥に響いた。

一体どんな事情があるのかわからないけれど、
とにかくすべてにおいていっぱいいっぱいである様子が伝わってくる。


「少し、中で話しませんか」

そう言った私の顔を驚いたように見つめたケンくんママは、
しばし逡巡したのち、こくりと頷いた。




まずはお互い落ち着いて話をしなければならない。

そう思い、温かいお茶を淹れた。

リビングで子ども同士を遊ばせながら、
私たちは少し離れた場所でお茶を飲みながら話をした。


「何に悩んでいるのか話してくれたら、
少なからず力になれることがあるかもしれません。
何も知らないままでは、手を差し伸べようがないんです」

そう言うと、ケンくんママは固い表情のまま、
重い口を開いてくれた。




ケンくんママ
「実は、風◯の仕事をしていて。
 自宅にお客さんを招いて仕事をしているので、
 カズに早く帰ってこられると仕事できる時間が減ってしまうんです。
 カズがいるのにできる仕事じゃないから……」

想像を超えた事実を知り、一瞬言葉を失った私。

でも、引いている場合じゃない。

自ら首を突っ込んだくせにここで投げ出すのは、
あまりにも卑怯だ。


「他のお仕事に変えることは難しいのですか?
 正直、心身への負担もとても大きいと思うのですが」




ケンくんママ
「借金があるんです。
 あの子の父親が作った借金で、結婚前に連帯保証人になってしまって……
 しかもあの子を妊娠した途端に逃げられて。
 だから、私が返すしかないんです。
 それには普通の仕事では収入が追い付かないんです。
 こんな話、誰かに相談したところで何が変わるわけでもないじゃないですか。
 むしろ責められて後ろ指さされるだけだし……」

卑屈そうに笑うケンくんママに、
私はきっぱりと言いきった。


「声を上げなきゃ何も変えられない。
 でも、上げてくれたら変えられることもあります」

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