◎前回の話はこちら
引越し初日にお隣の金子さんから町内会の会長に任命されてしまった私たち夫婦。
驚きが隠せず固まってしまった…。
金子
「聞こえなかったかい?あんたらが明日からここの町内会の会長だって言ってんだよ。」
私
「いや…あの、申し訳ないんですけど、さすがに引越し初日にそれは…」
私
「いくらなんでも早すぎるというか…。この町の勝手もわかりませんし、私たちが会長をすることによってご不便をおかけするだけだと思います…。他であればできる限りのことをしますから、お断りさせてください…」
思い切って本音を伝えた。
すると金子さんの表情がみるみる曇っていった。
金子
「あんた、自分が何言ってんのかわかってんのかい!?」
私
「え…?」
金子
「町内会の会長っていうのはね、この町を取り仕切る責任があるんだよ!会長の立場を断るということは、その責任を放棄するってことなんだ!」
私
「私たち別にそういうつもりじゃ…」
金子
「よくそんな半端な気持ちでこの地に引越してきたね!恥ずかしいと思いな!」
夫
「金子さん…、僕たち突然の話でびっくりしているだけで、そんな責任放棄とか、そういうことをしたいんじゃないんです。会長の仕事なんて僕たちに務まるかどうかもわかりませんし、もう少し時間を置いてから…」
金子
「ふざけるんじゃないよ!!会長をやらないならここにいる権利はない!今すぐ出ていけ!」
私
「いやあの…何を言ってるんですか。そもそもなんで…」
夫
「わ、わかりました!!」
私
「は?」
夫
「会長引き受けますから…。ですからそのようなことは言わないでいただけませんか…」
金子
「ふん!最初からそうやって引き受けてればいいんだ!」
そう言うと金子さんは乱暴に玄関のドアを閉めてしまった。
私たちは一言も発さず家に戻った。
私
「ねぇ…さっきどうして引き受けたの?」
夫
「ごめん…。でもあんな怖い目であそこまで言われたら、もう引き受けざるを得なくて…。それにこれから長く暮らすためにもここで問題を起こしたら良くないだろ…?」
私
「それはそうだけど…」
夫
「大丈夫!一緒にこなしていこう!なんとかなるでしょ!」
夫はそう言うが、現実はそううまくいくものではない。
私たちはまだ金子さんの本当の怖さを知らなかった…。