放置子

【No.8】毎日マイホームに来る放置子

放置子

◎前回の話はこちら

【No.7】毎日マイホームに来る放置子
◎前回の話はこちら どんな理由で我が子をほったらかしているのか、 どんな理由で「遅くまで帰ってくるな」と 小学校低学年の子どもに言い含めているのか。 様々な憶測が私の頭の中を駆け回った。 今日もケン...

しばらくすると諦めたのか、ケンくんは帰っていった。

静けさを取り戻したリビングで、
私はしばし呆然と座り込んでいた。


「ママ、大丈夫?ママ?」


「大丈夫よ。ありがとう、ごめんね」

そう言って娘の身体を再度ぎゅっと抱きしめる。




娘はさも不思議そうに、私に尋ねた。


「ママ、どうして今日はケンくんと遊んじゃだめだったの?
 ご用事があるの?」


「娘ちゃんは、ケンくんと遊びたかった?」


「うん。ケンくん意地悪な時もあるけど、やさしい時もあるよ。
 意地悪な時のケンくんはきらいだけど、やさしい時のケンくんは好き」

娘の言葉を聞いて、とめどなく涙があふれた。




意地悪をされても、
やさしい時もあるからとKくんをきらいになりきれない娘。

そのやさしさに胸が詰まった。


「そっか、ごめんね。
 ちょっと心配なことがたくさんあって。
 ママ、疲れちゃってて。ごめんね」


「いいよ。ママ、ごろんしていていいよ」

そう言って、娘は私の頭を撫でてくれた。




このままじゃいけない。
放っておいていい問題じゃない。

ふいにそんな感情が込み上げてきて、
私はほぼ衝動的に携帯電話を握りしめ、小学校の電話番号を検索した。

ダイヤルを押す手が震える。
でももう、後戻りをする気はなかった。

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